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君とともに・・・(HD)

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ー ねぇ、大ちゃん・・・これが20年目のオレの思い・・・・

だいぶ季節も夏らしくなってきた今日この頃、オレたちは夏のツアーや新曲の制作に追われていた。
そんな中、大ちゃんから渡されたのは・・・急遽リリースが決まったシングルのデモ。

大ちゃんから生まれる曲を最初に聞く時、いつもワクワクすると共になぜか緊張してしまう。
一種のプレッシャーみたいなものか・・・。
大ちゃんから紡ぎ出された純粋な音の海に自分の言葉をのせてしまって、この音たちを穢してしまわないか考える。
前にそんな事を口にしたら、大ちゃんは・・・
「僕の音は純粋じゃないよ。寧ろ感情的かもしれない。だから、怖いのは僕の方!ヒロに、嫌われやしないか!って・・・」
そう言ったんだ。
それを聞いて、今まで渡された全ての曲たちが不器用な大ちゃんからのラブレターだったのかと・・・違う意味で緊張したのを覚えてる。

あれからだいぶ経つけど、今ではオレの書く詞がラブレターへの返信になっている。

今回の新曲も・・・ほらね、大ちゃんからの「愛してる」が一杯詰まってる!
早速返事を書くためPCを起動させるも・・・なかなか上手く言葉が見つからない。
だって、今回は20周年の記念になるものだし・・・20年間の思いをどうすれば伝えきれるのか!久しぶりに煮詰まりそうだった。

『ヒロ、煮詰まってる? さっきから難しい顔して・・・?』
『大ちゃん・・・。なんかさぁ、伝えたいことが多すぎて纏まらなくなっちゃった。』
いつもなら事務所や自宅で作詞することも多いんだけど、今回は煮詰まり過ぎて打ち合わせ場所である大ちゃんのスタジオで作業中。
大ちゃんは既に次のアルバム曲の制作に取りかかってて、相変わらずもの凄いスピードでデモがオレの前に積上って行く。
その一つ一つに詞をつけなきゃいけないわけで・・・本当ならげんなりするんだろうけど、オレにはラブレターの山積みにしか見えないww
そんなことを考えてたらどうやら顔が崩れてたようで・・・大ちゃんから
『今度はやらし~顔になってる!ヒロ、何考えてるの?ちゃんと作業してよ!!』
と指摘されてしまった。

だってさぁ・・・20年経ってお互いそれなりに歳も重ねた訳で、なのに出会ったときより愛しくて、毎日新しい好きが増えていく!
今だって、大ちゃんは怒ってるつもりだろうけど・・・そのちょと突き出した唇に、オレは吸い寄せられそうになる・・・・・。

オレはそぉーっと大ちゃんに近づき、本能の赴くまま・・・ガバッと・・・・その唇を貪る。

『っ・・!?ぁんん・・・ふっ、んんっ!・・・ヒ、ロ・・・ちょ、ん・・・ふぁ・・っ////』
ドンドンと背中を叩かれて、ようやくオレは可愛い唇を解放してあげたのだけど・・・大ちゃんはそのままぐったりとオレにしな垂れ掛かってきた。

あれ?・・・これって・・・このままイッちゃってもOK?
なんて都合良く考えてたら・・・・
『い、って~~っ!?何?えっ!えっ??』
『///・・・ヒロのバカ~!もう知らない!心配した僕がバカだったよ!!』
そう言いながらオレの足を踏みつけて部屋を出て行く大ちゃんの姿・・・・・。

ー あーぁ・・・行っちゃった。しかも怒らせて・・・あっ!?

どーしよう!非常にマズい!確か、この後はツアーの打ち合わせで、それが終わったらお泊まりの約束が・・・・・。
この状況でいくと・・・オレは追い出される、よ・・・ね?

それだけは何とか阻止したくて、オレはあれこれと大ちゃんのご機嫌取りを考える・・・。
『何がいいかなぁ~。そうだ!ケーキ!・・・あぁ、それはこの前使ったか・・・。アイス!・・・一緒か。何かスイーツばっか・・・ww でも、甘いものを食べてる大ちゃん、可愛いんだよなぁ・・・///  』
ぶつぶつと大きな独り言を言いながら大ちゃんの喜びそうなことを考える。
そんな時、頭に一つの事が浮かんだ。

ー 大ちゃん、オレの詞を見た時、何時も驚いた顔をした後スッゴく嬉しそうな・・・はにかんだ笑顔を見せるんだ!
 それはオレの一番好きな瞬間!

そうだ!この詞を完成させたら大ちゃんも喜んで、もしかしたらあの笑顔を見せてくれるかも!

オレは急いでPCに向かい、あの新曲に合う詞を書き始めた。

ー あれから2時間ほど、ようやく詞が完成した頃、マネージャーから打ち合わせに来るよう、大ちゃんのいる会議室へと呼ばれた。

『大ちゃん・・・きっと驚くだろうなぁ~♪』

オレはワクワクしながらプリントアウトした歌詞を持って部屋を出た。
すると同じように会議室へと向かう大ちゃんと遭遇!
オレは声をかけようとするも、大ちゃんはすぐに目を逸らし、会議室へ入ろうとドアノブに手をかける。
慌ててその手を掴んだら、大層ご立腹の様相で睨まれた。

『大ちゃん、さっきはごめん! せっかく心配してくれたのに・・・・。』
『・・・・・・・べつに・・・・』
とりあえずさっきの事を謝ってみるも、下をむいたまま目を合わせてくれない。
オレは出来上がったばかりの歌詞、いや・・・ラブレターの返事を大ちゃんの顔の前に突き出した。

『これ、出来たんだ!読んで・・・貰えないかな?』
『えっ?・・・』
目の前に差し出された紙とオレを交互に見て・・・それから一心不乱に歌詞に目を通す大ちゃん。

・・・・ほら、驚いてる!それから・・・・えっ!?

あれ?何時もならここで嬉しそうに笑顔で・・・・何で、何で泣いてるの・・・?

『大ちゃん、それ・・・気に入らなかった?』
心配になったオレはすぐさま聞いてみる。
『・・・・・ううん・・・・違うんだ。 でも・・・こんな・・・・』
そう言ってまた静かに涙を溢れさす大ちゃん。

オレはどうしていいか分からないまま・・・やっぱり本能で大ちゃんを抱きしめる。
また、怒らせちゃうかな? そんな事も頭の隅を掠めたけれど・・・泣いてる大ちゃんを放っとくなんてできなかった。
大ちゃんは抵抗することなくオレの腕の中に収まって・・・ひとしきり泣いた後、ようやく顔を上げて微笑んだ。

『ヒロ、ありがとう。僕、いいのかな?こんなにハッキリとした言葉をもらって・・・///』
『大ちゃん・・・。オレね、今は誰にも遠慮したくないんだ!20年、間に7年の空白があったけど・・・でもね、二人で過ごした日々が今のオレたちの音楽を、accessを作ってるんだって!だから、これから先も二人で生きていくんだって!皆に自慢したいんだよ♪』
『ヒロ・・・・』
せっかく泣き止んだと思ったのに、大ちゃんの目には新たな雫。
『そんなに泣いたらミーティングに支障がでちゃうねww』
オレは大ちゃんの瞳を濡らす雫を舌で拭い、瞼に口付けてから・・・その可愛い唇に・・・今度は怒らせないように、ね♪