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レモンカスタード(HD)

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今日は大ちゃんのラジオ収録の日。オレもゲストとして参加するためスタジオに向かった。

今年はaccess20周年ということもあって、大ちゃんと一緒の時間が公私とも多い。
きっとオレは浮かれ気分だったんだ!だから・・・あんなこと・・・・。

『おはようございます!よろしくお願いします!!』
オレはスタジオのドアを元気いっぱいに開け、慌ただしく準備をするスタッフに声をかけた。
すると奥の部屋から可愛い声!
『ヒロ、いらしゃーい♪今日はよろしくね♪』
『大ちゃん!今日は遅刻しなかったねww』
『ひどい!僕だって・・・今日は楽しみにしてたんだよ!・・・ヒロに、会えるし・・・・・////』

ー あぁ、今日も可愛いなぁ~・・・////
その突き出した唇も、リスのように膨らんだほっぺたも・・・20年も一緒にいるのに、毎回新しい『好き』が増えていく♪

オレって幸せ~!!

『ヒロ!ヒ~ロ!!なにしてんのー?お仕事の時間だよー!』
その可愛い姿に惚けていたオレに・・・お仕事モードに入った大ちゃんから声がかかった。
『はいはーい!今行く~♪』

そうして始まったラジオ収録、二人ともどこか浮かれた気分で楽しく進んでいく。
途中、Twitterのハッシュタグについて聞かれた時、うっかりDAをDYと間違ったオレに可愛く拗ねたふりしてツッこむのも何時もの光景。
本当に楽しくて・・・大ちゃんもオレも何時も以上に高いテンションが続いていた。

そんな中、収録が中盤を過ぎた頃に大ちゃんがプレゼントしてくれた日食グラス。
真っ赤なデザインにカッコいい大ちゃんの写真がプリントされていて・・・思わず見とれてしまった。
相変わらずテンションの高い大ちゃんが、オレの言った『日食、一色』にウケている事にもつっこめないほど。
それをどう勘違いしたのか、大ちゃんは
『なんで~!置いてかないで~!』
と可愛く拗ねている。ハッとなったオレはあわてて
『違うよ~!格好良さに見とれてたんだよ~♪』
と、白状しつつ手元にあった日食グラスの注意書きを読む。

『太陽の光はとても強く、目にキケンです。必ず女・・・あっ!!』
多少の動揺があったのかもしれない。すぐに、『大人と一緒に・・・』と訂正するも一瞬、大ちゃんの瞳が揺らいだのを見逃さなかった。
ただ、大ちゃんはその後もいつも通りのツッコミをいれ、笑いながら収録は進む。

ー オレの、見間違い・・・・・?

何時もの笑顔、さっきと変わらないテンション・・・・なのに、感じる違和感。
やっぱり、怒ってる?でも・・・悲しそうにも見えたし・・・・。
オレがあれこれ考えてる間にも収録は進み、最後にコメントを求める大ちゃん。
意を決してオレは・・・・
『金環日食は大好き(大介)グラスでいきましょう!』
と間違えた振りをして告白をしてみた。すると、
『嬉しい~♪』

・・・・それだけ。間違った事には触れずそのまま終了!
オレはますますヤバい気がして、収録終わりの大ちゃんに声をかけようとしていた。
でも・・・スタッフに挨拶をし終わった時、大ちゃんの姿は見えなくなっていたんだ。

スタッフに聞いたらさっさと帰ったとの事。とりあえず電話をかけてみる。
・・・・・出ない!!
慌てて大ちゃんの自宅とスタジオの固定電話にもかけてみる。
・・・・・やっぱり、出ない!!自宅はともかくとして、スタジオには誰か居るはずなのに・・・。
心配になったオレは急いでスタジオに向かった!

 いつもより短い時間で着いた大ちゃんのスタジオは・・・真っ暗だった。
そのままま自宅も覗いたけどやっぱり留守で・・・携帯を見たけどメールも着信も無かった。
何時もならすぐに返信されるのに・・・・・。

ねぇ、今・・・どこに居るの?
ざわざわする気持ちを抑え、オレは一旦家に帰り、明日まで待ってみようと思った。
もしかしたら誰か友達と飲みに行ったのかもしれないし、今頃お肉でも食べてて着信に気付いてないだけかもしれないから。

でも・・・家に帰って一人になると、なぜかあの瞬間の大ちゃんの目が頭から離れない。
今にも泣きそうな、悲しい瞳・・・。
シャワーを浴び、ネガティブになる思考を断ち切ろうとするも・・・やっぱり浮かんでくるのは、必死で泣くのを我慢している大ちゃんの顔。

そうだ!あの人はいつも我慢している。辛くてもそれを口にせず、全部自分一人で何とかしようと周りを気遣うんだ。
その事を思い出したら居てもたってもいられなくなった!!
きっと何処かで辛いのを我慢しているに違いない。オレの勘は外れない。こと大ちゃんに関しては!

20年、いろいろあったけど、オレはずっと大ちゃんだけを見てたんだから!!
早く見つけなきゃ!「一人で泣く」なんて、させたくなっかった。

でも・・・どこに行けば・・・?

オレは大ちゃんの行きそうなところを考えた。あの人はいつも何かあると・・・音に・・・
あぁ!わかった!!音だよ、音!!
いつも素直に感情を出せない彼の唯一の表現は・・・大ちゃんの音。メロディー!
製品化された音ではほとんどわからなくなってるけど、オレが一番最初に大ちゃんから聞かされる音にはいつも作った時の感情がそのまま入ってるんだ。

だからオレは・・・大ちゃんの事がわかるんだ!
素直じゃない彼の、素直すぎる思い。それが大ちゃんのメロディー!
そうとわかれば行き先は一つ。彼の、スタジオ・・・。
オレは急いで携帯と財布、車のキーを掴んで部屋を出た。

どうか、間に合いますように・・・・

先ほども覗いたスタジオ。やっぱり真っ暗で人の気配がない。
駐車場に車を止め玄関先に来たオレは、思い切って入り口のドアに手をかけた。

ー  ガチャリ  ー

・・・開いてる? そう言えば、さっきはドアの前で引き返したんだ。鍵がかかってるかどうか・・・確かめてなかった!!
真っ暗なスタジオの中を静かに歩く。見慣れた場所のはずなのに、少しヒンヤリとした空気に何だか拒絶されてるようで怖くなった。

ふと、ある部屋の前で何かが一瞬光った。

いた!やっと・・・見つけた!
ピアノの部屋で入り口に背を向け、ただボーッと座ってる彼の姿が暗闇の中、一瞬だけ光る携帯の着信ランプに照らし出されていた。
その姿が余りにも小さく儚く見え、彼が消えてしまいそうな恐怖にかられたオレは、慌てて部屋に入りその身体を後ろから抱きしめた。

『ごめん・・・・。』
瞬間、ピクリと肩を震わせるも黙ったまま。オレはもう一度、彼の耳元に・・・
『ごめ・・・』
『ううん、違う!・・・ヒロが・・・悪い訳じゃ、ない・・・。』
二度目の謝罪の言葉を言わせないように被せられた、彼の声・・・。
『僕が、勝手にぐるぐるして・・・一人、で・・・・っ・・・!』
そう言った彼の声が震えているのに気付いたオレは、抱きしめていた手を解いて正面から彼の顔を覗き込んだ。

その時、はらり・・・と流れ落ちる雫。

ずっと我慢していたんだと思うそれは・・・静かに彼の頬を濡らす。
暗闇に、わずかな光で浮かび上がるその顔があまりにも綺麗で・・・不謹慎にも見とれてしまう。
と、同時に沸き上がるのはとてつもない罪悪感。

ー オレ・・・こんなにも不安にさせてたのかな・・・?

『大ちゃん・・・一人で不安にさせてごめんね・・・』
『違っ!・・・僕が・・・僕がヒロのこと・・・・・きっと、最近一緒の時間が多すぎて・・・幸せすぎて忘れてたんだ・・・!』
『どういうこと? 忘れてたって・・・・。』
 大ちゃんは暫くだまってうつむいていた。

どれくらいそうしていたのか、ようやく顔をあげた大ちゃんは、ぽつりぽつりと話しだした。
『僕は、忘れてたんだ。最近のヒロは本当に優しくて、一緒の時間も沢山あって・・・毎日時間が過ぎて行くから・・・。ヒロが結婚とか、子供とか・・・当たり前のことを手放したわけじゃないってことを!』

『・・・・大ちゃん・・・』
『あの時、ヒロの口から女って言われて・・・気付いたんだ。普通に考えたらイベントは大切な人(異性)なんだ!って・・・。僕が、ヒロに執着してるからヒロは本当の気持ちが言えないんじゃないか!って・・・。』

そう言って自分を責め続ける目の前の愛おしい人を、オレは一生手放したくないと瞬間的に思った。

『大ちゃん、やっぱり・・・ごめんね。オレがもっと自分の気持ちを伝えてたらこんなに泣かせること、なかったのにね。オレ、結婚とかとっくの昔に忘れてたよ!  だって、オレにとって大ちゃんのいない世界は生きてる意味すら持たないから・・・。』
『ヒ、ロ・・・』
『もうね、そんなこと忘れちゃうくらい大ちゃんが好きなんだ♪ 毎日毎日、好きで好きで・・・20年経っても毎日新しい好きが増えていくんだ!今だって・・・、泣いてる顔が綺麗だな~!とか、オレのことで一人ぐるぐるしてる姿がかわいいな~!とかww』
『・・・・・/////』
『ね!毎日どんなことでも好きになるし、その度にオレって幸せだな~って思うんだ!・・・だから、これからは一人で泣かないで!二人でずっと歳を重ねていこう!』
『それって・・・まるで、プロポーズじゃん・・・////』
『そうだよ!これはプロポーズ。今までちゃんと言ったことなかったもんね!』

ー  20年目の君に・・・20年目のプロポーズ  

『これからも、よろしくね!大ちゃん♪』
『僕で・・・いいなら・・・////  よろしくね、ヒロ♪』
                    
                     end